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日本デジタルマネー協会 / ビットコイン / Bitcoin

ビットコインなどのデジタルマネーのもつ意味を考えてみる

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価格変動の激しさから投資対象として注目されがちですが、ビットコインなどのデジタルマネーは取引コストを劇的に下げ、途上国の貧しい人でも金融サービスを享受できるという素晴らしい可能性を持っています。

以下では現状考えられるデジタルマネーのメリット、デメリットを整理してみたいと思います。

1.デジタルマネーのメリット

(1)金融取引のコストを劇的に下げられる

海外にお金を送金しようとすると、現状は銀行などの金融機関を通す必要があり、その手数料は数千円もして非常に高額です。このため、特に海外との小口取引は手数料を考えると割に合わず、せっかく欲しい人が沢山いても商売が成り立たないケースが多いのが実情です。

この点、デジタルマネーを用いると、極めて低い手数料(取引コスト)で小口の振込や送金を簡単に行うことができるため、以下のような商売や取引の機会が世界中で広がると言われています。

  • 中抜き、手数料を取られずに、10円、100円という単位から世界中で行われている社会貢献や慈善事業への寄付が可能になる。
  • アイデア次第で非常に小さい金額を世界中から集められるため、いろいろなビジネスが生まれる素地になる。
  • 無名のクリエイター、ミュージシャンなどが、単体では商業ベースでの収益化が難しい自作のコンテンツに対し、「いいね!」という感覚で投げ銭を集められ、マネタイズを実現できる。
  • 個別の記事単位などで小口課金が可能となるため、雑誌や新聞業界などの復活の起爆剤になる。
  • 少額でもリアルな取引が可能なため、子供が投資や、商売を学ぶ非常に良い機会を提供できる。

(2)途上国や貧しい人が金融サービスを享受できる

貧しい国では銀行口座が作れず、また、激しいインフレで資産を蓄積することができず、貧困から脱却できない人が多数います。デジタルマネーは携帯端末の中に、誰でも簡単に「世界共通基準の資産」を蓄積できる口座を持つことができ、途上国の人々に「資産を蓄積する」という概念をもたらすことができます。

  • 貧しく銀行口座が開けない人、発展から取り残された地域の人でも、携帯端末さえあればデジタルマネーを用いることで金融取引を行うことができる。
  • デジタルマネーを用いて、たとえ格安な伝統工芸品などでも、取引コストを抑えて世界中に販売することができ、貧困からの自律的な脱却の手段となりうる。

(3)資産の防衛手段となる

国による多額の借金、紙幣を増刷する中央銀行、インフレなど、特に途上国においては通貨リスクが非常に大きく、一般市民ではなかなか対抗ができません。これに対しデジタルマネーは、世界共通の基準で価値が担保されるため、少額からでも資産を分散保有することが可能になります。

(4)暴利を貪る金融機関に対する「No!」を表明できる

過剰なリスクテイクを行い、儲かれば自分だけで総取りし、損をすれば税金で救われるという、規制で守られた独占的な金融業界に対する怒りは、リーマンショック時に世界中で高まりましたが、結局は税金による救済を止めることにはなりませんでした。一般市民は金融という社会インフラを使わざるを得ないため我慢してその横暴さに耐えてきましたが、デジタルマネーは金融機関を使わずに、社会インフラである金融サービスを享受できる機会を提供してくれます。

2.デジタルマネーのデメリット

デジタルマネーは、特に発展途上国のように自国通貨の信認が低く、金融インフラが未整備の環境では非常に強力なツールになります。しかし、デジタルマネーは金融機関などの中間業者を飛び越え、直接当事者同士が取引を行うため、取引内容を捕捉し難いという面があります。

以下ではデジタルマネーのデメリットについて考えていきます。

(1)マネーロンダリングに使用される可能性がある

デジタルマネーの仕組みは直接当事者同士が取引を行う(P2Pと言います)ため、第三者に知られずに取引ができてしまいます。このためマネーロンダリングの危険性があるとして禁止してはという意見も多く出ています。また、同じ理由で税金の補足も難しいという問題もあります。

しかし、反社会的な取引はデジタルマネーのみに関わらず、他のリアルな取引でも起こっており、犯罪者と規制当局との競争は延々と続いています。

たしかに大きな問題点ではありますが、デジタルマネーだけの固有の問題点ではないため、利便性や使用者全体の中でのデメリットの影響・構成割合を客観的に考え、現実のリアルな取引での規制と同様に地道に対応を行っていけば良いのではないでしょうか。

また、以下のような点からの対応も考えられます。

  • 取引を行った人物の特定は難しいですが、デジタルマネーの取引は追跡可能であるため、疑わしい取引を洗い出すことは可能であること
  • デジタルマネーを現実通貨と交換する取引所等の管理を適切に行うこと
  • デジタルマネーを使用する財布などのアプリで、本人確認をした者同士だけの安全な商圏を構築し、疑わしい取引相手との取引インセンティブを低下させること
  • リアルマネーに交換された時点で収益認識を行い課税すること
  • 財布アプリへの「安全性の承認」マーク付与などの制度を作り、その承認要件として、セキュリティ面での要件を満たすことに加え、本人確認や一定程度の取引のトレース機能の義務化を持たせること

(2)投機的な動きで価値が安定しない

デジタルマネーはまだまだ登場して間もないため、参加者が少なく、価値が乱高下している段階です。しかし、やがて普及段階に入り、多様な参加者と多様な裁定取引メカニズムが働き始めると一定の変動幅に収れんしていくと思われます。現実通貨も為替レートとして一定程度変動していますが、同じ程度の変動幅になるのではないでしょうか。そして価値が安定すれば、「通貨」として安心して使えるようになり、爆発的に普及していく可能性があります。新しく、そして革命的な技術、アイデアであるからこそ、長期的な視点で見ていく必要があるでしょう。

(3)価値の裏付けがない

日本のように安定した「通貨」の国で暮らしていると、「通貨」の価値は絶対的に保護されていると考えてしまいますが、他の途上国などを見ると、「通貨」は国の政治体制などにより非常に不安定となり、泡のように消えてしまう例は歴史上無数にあります。特定の国の政治体制、経済状況に依存しないからこそ、デジタルマネーは「価値を持ち続けられる」とも言えるでしょう。

大昔、「石ころ」を交換手段として人類が使い始めた時、それに価値が無いことは誰もが認識していました。しかしそれは「交換の手段」として使えると皆が認識していたため「通貨」として機能していたのです。

デジタルマネーも「交換手段」として使用できると世界中の人が認識し、そして使い始めているからこそ、「通貨」として機能しているのです。「通貨」が「通貨」として機能するには、本質的にどこかの誰かが価値を保証する必要などはないのではないでしょうか。

(4)仕組みが難しい

デジタルマネーは非常にシンプルなアイデアであり、だからこそ直観的な理解を超えた難解さを持っています。また、同じデジタルマネーでもビットコインとリップルコインとでは、大きく仕組みが異なるなど、IT知識の無い人には非常に分かり難い状況となっています。しかし、デジタルマネーの論理的確からしさは世界中でハイレベルな頭脳を持つ人々により検証が行われ、一定の評価が得られています。

「難しいことを皆が理解できること」と「便利だから皆が使う」ことはあまり関係が無いことです。Googleで検索をしている人が、難解な検索アルゴリズムを理解しているかというとそうではありません。デジタルマネーもその難解な仕組みを理解できなくても便利に使うことができるのです。

(5)金融政策の自由度を奪う

デジタルマネーの流通が増えれば、現実通貨をベースとした金融政策の自由度が奪われるという意見もあります。

この点については、まず、デジタルマネーが普及したとしても、実体経済の大部分を占めるほど増えるとは考え難いでしょう。やはり信頼性の高い「円」や「ドル」が通貨としては限りなく大部分を占め、小口の決済などの一部分でデジタルマネーが使われるという状況になるでしょう。ただし通貨の信頼性の低い途上国などではデジタルマネーが経済の大きな割合を占めることが起こるかもしれません。

また、基本的に金融政策は、中央銀行が短期金融市場を通して銀行の貸出金利をコントロールし、企業の借入金利に影響を与え、実体経済をコントロールしようという仕組みです。しかし、大規模な経済発展が望めない今後の先進国のビジネスにおいては、銀行から資金調達を行い、規模の大きな設備投資などをベースとしたビジネスを展開するのではなく、アイデアとネット環境をベースとした知識集約型のビジネスが主流になると言われており、資金調達需要は急激に減っていき、伝統的な金融政策自体の有効性が低下していくと考えられます。大規模な借り入れを行い、返済を再借り入れで乗り切る大企業、金融技術でリスクを巨大化させる金融機関、大量に紙幣を発行し国債を引き受ける中央銀行は経済の攪乱要因とさえなっていきます。そのような利己的で実体経済に悪影響を与えるプレーヤーから独立した、世界共通の経済圏がデジタルマネーにより構築されることは、経済の安定という点にむしろ貢献するのではないでしょうか。

また、デジタルマネーは政策により恣意的に歪められる為替リスクを考慮しないで安定的に対外貿易が行えるので、輸出入を拡大したい企業にとっては非常に大きなメリットになるでしょう。

(6)入手が困難

現状は取引所も限られ、詐欺サイトなど怪しい情報が飛びかっている状況にあり、デジタルマネーを手に入れることは容易ではありません。しかし、まだデジタルマネーは登場の初期であり、インターネットが登場した初期の頃とよく似た状況にあります。これから普及段階へと進む過程で様々なサービスや参加者が登場し、アクセスの容易性は信頼性とともに高まっていくでしょう。そして、普及とともに現状のような過大な収益が得られる投資対象としての意味合いは減少していき、単なる取引手段へと変化していくでしょう。この点も長期的に見ていく必要があります。

(7)電気代の無駄

特にビットコインはその仕組み上「マイニング」という取引承認を分散ネットワーク上で行う作業が必要となり、その作業に協力した人には報酬としてビットコインの分配が行われるため、非常に多くの人が高性能のPCをフル稼働させ参加しています。そして現在その電気代は1日当たり数千万円ととても大きくなっていると言われています。

この点が「エコ」ではないという批判が行われており、確かに一理ある指摘だと思います。しかし、現実通貨の維持には中央銀行や金融機関、ATMなどを支える莫大なコストが必要とされており、その比較で考える必要もあります。
また、高額な電気代を回避しようと過疎地や砂漠での太陽光発電など、発電のイノベーションを引き起こす様々な創意工夫も行われています。

3.まとめ

インターネットが登場した時は、よくわからない技術と言われたり、違法取引や著作物のコピーが容易であるなどの負の側面が強調されました。しかしその後、生活に欠かせないインフラに成長しました。今でもインターネット上の詐欺行為などは相変わらず続いていますが、マイナス面があるからと、インターネット自体を規制してやめさせようとする意見は誰からも賛同を得られないでしょう。

デジタルマネーにもメリットとデメリットが存在しており、特にまだ登場間もなく、「よくわからない」ため、負の側面ばかりが注目されています。しかしデメリットはこれからの長期の時間軸の中で世界中の英知を集めて解決していけばよく、それをもってメリットを失ってしまう事は非常に大きな社会的な損失と考えられます。

すでに国際的にはメリットを評価し、そこから発生するビジネス機会を捉えようと多数の人々が参入を始めています。「よくわからなくて、デメリットもあるから」と特定の国が規制をしても、世界で爆発的に普及すれば、ビジネス機会を失うだけになるでしょう。デメリットも客観的に認識し、それには現実的に対処しつつ、デジタルマネーによりもたらされる大きな成長機会を掴めるよう前向きにサポートする国がこれからの「金融ビジネス」で大きな役割を担っていくことになるでしょう。

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